FLUffY
2020|client work Design (Logo, Card, Illustration, ShopSign)
FLUffYはパンがうまい。食パンを「パンドミ」と呼ぶタイプの店ではあるが肩肘張る感じはぜんぜんない。そのパンドミがほんとにうまい。生地の水分が少ないため冷凍して保存ができ、凍ったままトースターで焼いても大丈夫で、かじるとサクサクしてて麦の味が濃い。特別パンに詳しくないが、食べている間ずっと空気がおいしい。
開業は2009年。10周年の節目や業態の変化を機会として、ロゴを始めショップカードや看板を刷新したいとの依頼だった。FLUffYはかなり小さな敷地ではあるが、店舗でのパンとスープ(ランチのみ)の販売の他に、定期的にパン教室とお料理教室をやっている。普段パンを並べる什器は凝った作りになっていて、教室の際にはパンや料理を作るための机に変形出来る。
20種類くらいのパンとその日のランチスープは全て店主の奥村香代さんが作ることとなっている。手作りばかりのこの店において、それはとてつもない量なんだろう。ある時、お昼すぎに打ち合わせにお店に行くと香代さんは笑いながらつかれた〜と言って座っていて、目をしょぼしょぼさせていた。パン屋の朝はすごく早い。考えてみると、いつもお店の仕事が落ち着いた頃に打ち合わせていたので、目がしょぼしょぼしている香代さんしか会ったことがないかもしれない。失礼な話かこれは…。ともかく、せまいながらもたのしいわが家というか、小さい単位にぎゅっと営みの詰まった場所であり、その小ささにどんな形が適切なのか探す作業だった。
- shopcard
- illustration
始めは手描き調のロゴデザインを提案したが、どちらかといえばシンプル・ややクールなものを望んでいるようだった。とはいえこの場所の在り方はハイブランドのようなクールさではないだろうとも思い、その間を取り持つイメージで進めた。すでにある程度の歴史を持っている場のロゴデザインを刷新する際は、周囲が持つ印象と場が持たれたい印象の間に手をねじこみ、両端に影響されつつぐにゃぐにゃと成形するよう。やりとりを繰り返す内に依頼主が本当のところどうなりたいのか少しずつ分かり、同時に自分がどんなレッテルを貼ってきたか気付かされる。最終的な形はその綱引きの結果で、なぜこうしたか説明できない部分も少し残る。
今回で言うと鳥の絵がその説明できない部分にあたる。この鳥は結果的にFLUffYの方々に様々な形でグッズ化というか、何かと楽しんで使われることとなった。自分はあくまでビジュアルを作る仕事で、依頼された形ができれば一旦の終わりを迎えるが、店(場所)というものは続いていくので、日々目にする中で思いついたら面白がって使ってもらえると嬉しい。作ったものに思ってもみなかった展開が現れる時、それが何だったのか反対に教えられる。あるいは説明できない部分にこそ、他人が思い思いに捉えて使いだせる余地があるのかもしれない。